PEROPERO(The White Show)
開廊時間|火〜土 11:00–19:00 (土 13:00–14:00 CLOSED)
休廊日|日・月・祝日
※臨時休廊|9月18日(木)〜20日(土)
このたび、Akio Nagasawa Gallery Ginzaでは、トーマス・マイレンダー個展「PEROPERO(The White Show)」を開催いたします。
フランス・マルセイユ生まれのマイレンダーは、現在パリとマルセイユを拠点に活動しています。写真家として広く知られる一方で、セラミックやコラージュ等幅広いメディアを用いた作品も制作し、また、コレクターやアーキビストとしての側面も併せ持ちます。
彼は独自の《アプロプリエーション(引用・転用主義)》を実践し、古書や蚤の市で見つけた写真を収集・分類・再解釈したうえで、モンタージュやプリント上へのドローイング、オブジェとの組み合わせなどの手法で再構築してきました。
本展では、セルビアで収集された特異なコレクション――雑誌やテレビ番組から撮影し直された、10×15cmの絵葉書サイズの写真群――をもとにした大判のシルクスクリーン作品を発表します。作品は不可視の白い特殊インクで全面を覆われ、観客の介入によって初めて像が顕れる仕掛けとなっています。
タイトル「PEROPERO」は、舐める行為を想起させる日本語のオノマトペから名付けられました。同時に刊行される作品集『PEROPERO』に収録されたイメージもまた、特殊インクによって覆われています。このインクは銀行券や機密文書の印刷に用いられるもので、液体と接触することで初めて像が現れます。マイレンダーは、今回の展覧会と作品集を、“(逸脱的な)「行為」を通じて活性化され、触れられ、露わになるオブジェ”と表現しています。
さらに本展では、1950年代から2000年代にかけて流通した感光紙の箱を模したセラミック作品も発表されます。これらは、写真黎明期に開発されたエナメルへの写真転写技法を用いて制作されました。像は陶器の表面に転写され高温で焼成されることで定着したガラス質のエナメルは、光・湿気・酸化に強く「永遠」と称されるほどの耐久性を誇ります。この技法は特に葬送芸術に用いられ、今日でも記念碑のポートレートメダイヨンとして使われ続けています。マイレンダーがセラミックに転写したこれらの作品は、もともと感光紙を収めるために作られた「箱」であり、写真の脆弱性とイメージの永続性とのあいだに潜む緊張関係を際立たせています。
今回の展覧会と作品集のために制作されたオリジナル作品群を、ぜひこの機会にご高覧ください。
※本ページに掲載の画像は全て参考イメージとなり、実際の展示作品とは異なります。
アーティスト
トーマス・マイレンダー
Thomas MAILAENDER
1979年フランス・マルセイユ生まれ。現在はマルセイユとパリを拠点に活動。
写真家として広く知られているが、セラミック、サイアノタイプ(青写真)、コラージュなど幅広いメディアを用いた制作も行う。
コレクターでありアーキビストでもあるマイレンダーは、デジタルとアナログ双方の領域において独自の「アプロプリエーション(引用・転用主義)」を実践している。インターネットで「真珠」を探し当て、過去の出版物や古書市、ガラクタ市から写真を掘り起こし、それらを収集・分類・咀嚼したうえで、モンタージュやプリント上へのドローイング、レジスターの操作、拡大、オブジェとの組み合わせといった手法で再構築している。
トーマス・マイレンダーの膨大なコレクション《The Fun Archaeology》は、現代世界における最悪のものを対象とした一種の考古学的研究であり、その資料群は言語の土着的な豊かさや偶発的な詩情を浮かび上がらせている。作品全体は「趣味(taste)」の問題を問いかけ、キッチュさやアマチュアリズム、下品さの境界線上に答えを見出し、滑稽さとセンチメンタルな感情を併せ持つ表現へと昇華している。
近年の大規模な個展として、2024年にパリのヨーロッパ写真美術館(Maison Européenne de la Photographie, MEP)で開催された「Les Belles Images」や2017年にデュッセルドルフのNRWフォーラムにて開催された回顧展「The Fun Archive」などがある。また、サンフランシスコ近代美術館(MoMA SF、キュレーター:クレマン・シェルーによる「Don’t! Photography」と「Art of Mistakes」)、ロンドンのサーチ・ギャラリーやテート・モダン、パリのパレ・ド・トーキョー、アルル国際写真フェスティバルなど、国際的な重要美術機関や展覧会で紹介されている。
これまでに多数の作品集を出版し、LVMH Métiers d’Artのレジデンシーにも選出された。さらに、2016年のアルル国際写真フェスティバルでの「Hara Kiri」や、2017年アムステルダムのUnseenにおけるエリック・ケッセルスとの共同企画「Photo Pleasure Palace」のキュレーションも手がけている。