AOYAMA

根本敬 presents 蛭子能収「最後の展覧会」

蛭子 能収根本敬

2023年9月7日(木) - 9月30日(土)
開廊時間|水〜土 11:00–13:00, 14:00–19:00
休廊日|日〜火・祝日

監修|根本 敬 
企画協⼒|FATHER'S CORPORATION、光⽂社

※新型コロナウイルスに関する状況により会期や内容を変更する可能性があります。

プレスリリース(PDF)

この度、Akio Nagasawa Gallery Aoyamaは、蛭子能収個展「最後の展覧会」展を開催致します。
蛭子能収は1947年生まれの漫画家です。長崎商業高校卒業後に看板店やちりがみ交換、ダスキン配達などの職業を経て、26歳で『月刊漫画ガロ』誌上にて漫画家としてデビューしました。俳優やタレントとしても活躍し、2020年に認知症であることを公表しています。

本展では、「特殊漫画家」根本敬監修の元、全点描き下ろしの新作を発表致します。
この機会に是⾮ご⾼覧下さい。

 

蛭⼦能収といえば、世間⼀般の認識としてはテレビタレントにいたおかしな⼈ですが、私にとっては前衛的な漫画やイラストを描く「ガロ」の実に偉⼤な先輩です。
その蛭⼦さんが2014年に認知症の初期段階とTV番組の企画で診断されました。たしかにその頃から物忘れは著しく、画⼒も微妙な感じになってきてはいました。従来の⼿抜きとは違い、線が思わぬ⽅向へ変化しているのです。
その頃⾃⾝の描いたイラストを指して「⼩学⽣みたいな絵やね」と⾃嘲する様に⾔いました。
しかし、蛭⼦さんと私が師とあおぐ湯村輝彦(aka テリージョンソン)さんが「⼩学⽣みたいに⾒えても絶対におじさんにしか描けない絵」と前向きに評したのでした。
6年後の2020年、皆さんもご存じの通り蛭⼦さんは「レビー⼩体型認知症とアルツハイマー型認知症の合併症」である旨を公表しました。
その際に放った「(これからは)認知症のオレを笑って下さい」という⾔葉に偽りはなく、オレは今まで通りバリバリ仕事をするからこれからも宜しく頼みますという意思表明だったと思います。
しかし、現実はそうは⾏かず、認知症を公表したタレントの仕事はみるみる減り、漫画家としての描いたり、もしくは書いたりといった仕事も激減し今や限りなくゼロに等しいのです。
このまま蛭⼦さんをフェイドアウトさせてはならない、絵を描くことからスタートした蛭⼦さんを最後は絵=芸術家として飾って貰えたらと考える⼈達が少なからずいて、この度の展覧会は企画されました。
約1年と少し前の話です。
そして準備も整い今年の春から絵を描き出しました。
とはいえ、この展覧会へ向けてキャンバスに向かう頃には症状は進み、かつて⾃らの⼝から出た「⼩学⽣みたいな絵」は「幼児みたいな絵」になっていました。
しかし、件(くだん)の湯村さんの⾔葉に倣えば「幼児みたいに⾒えても絶対におじさんにしか描けない」、より具体的⾔えば「幼児みたいな絵に⾒えても75歳、認知症の蛭⼦能収にしか描けない絵」なのです。
どの絵も「⽣きる」ということが本質的に内包する儚さを突きつけてくるのですが、それでいて幸せな気持ちにもなってしまうのは企画した私達だけでしょうか。

− 根本 敬(特殊漫画家)

アーティスト

1947年10月21日生まれ。漫画家。長崎商業高校卒業後、看板店、ちりがみ交換、ダスキン配達などの職業を経て、26歳のときに『月刊漫画ガロ』誌上にて「パチンコ」を発表し、デビュー。俳優、タレントとしても活躍。2020年7月、認知症であることを公表。

根本敬

Takashi NEMOTO

1958年6月28日
東京都渋谷区に生まれ、目黒区で育ち。
自称・特殊漫画家

高校生の頃より「月刊漫画 ガロ」を愛読。
いつしか漫画を描きたいというより、「ガロ」に参加したいと思うようになり、81年「ガロ」デビューし、漫画家生活に入る。

90年代に入ると漫画より文章やイラストレーションの仕事に比重が移る。
イベントのプロデュース(脱特殊歌謡祭)や映像作品(さむくないかい、因果境界線)も手がけたこともある。
「幻の名盤解放同盟」(他に湯浅学、船橋英雄)として埋もれた歌謡曲や、韓国ロックやポンチャックをCD化して紹介。
現在、美学校にて「特殊漫画前衛の道」を持ち講師をつとめる。

<主な企画展・グループ展>
2000年代に入るとアップリンク・ファクトリーにてトークショー「映像夜間中学」開始。20年続く。
既存のレコードジャケットを独自の解釈するカバーしたレコジャケ展を度々開催し、160数枚に達したのち、画集「ブラックアンドブルー」として纏める。
2015年マルセイユを拠点とする異能アート集団ル・デルニエクリ企画の「MAN-GARO/HETA-UMA」展のため渡仏。
2018年にはゲルニカサイズの大作「樹海」を描きMIZUMA ART GALLERYで同年12月個展開催。

<主な著作>
漫画 「生きる」「怪人無礼講ララバイ」「龜ノ頭のスープ」ほか。
文章 「因果鉄道の旅」「人生解毒波止場」「真理先生」「ディープ・コリア」(共著)ほか。
画集 「THE END」「ブラックアンドブルー」ほか。