モレモレ東京
開廊時間|火〜土 11:00–19:00 (土 13:00–14:00 CLOSED)
休廊日|日・月・祝日
※11月29日(火)〜12月10日(土)はビル工事のため休廊致します。
※新型コロナウイルスに関する状況により会期や内容を変更する可能性があります。
この度、Akio Nagasawa Gallery Ginzaは、毛利悠子個展「モレモレ東京」を開催致します。
毛利悠子は1980年神奈川県生まれ。
コンポジション(構築)へのアプローチではなく、環境などの諸条件によって変化してゆく「事象」にフォーカスするインスタレーションやスカルプチャを制作し、「リヨン・ビエンナーレ」「サンパウロ・ビエンナーレ」「シドニー・ビエンナーレ」をはじめ国内外で精力的に活動しております。
本展では、毛利が2009年から撮り続けてきた「モレモレ東京」シリーズより作品を展覧致します。本シリーズは今年の「シドニー・ビエンナーレ」で展示されて好評を博し、2023年にはアデレードの美術館への巡回が決まっています。また、開催にあわせ、写真集『Moré Moré Tokyo (Leaky Tokyo) 』をAkio Nagasawa Publishingより出版致します。
この機会に是非ご高覧ください。
水漏れする駅、東京の日常にひそむ思いがけない「美」
レーナ・フリッチュ(アシュモレアン・ミュージアム 近代現代美術キュレーター)
上下ひっくり返した傘、チューブ、ビニールシート、袋、ペットボトル、バケツ──東京の電車や地下鉄の駅で多様な日用品が創造的に組み合わされ、つぎはぎされ、ダクトテープで天井、壁、床などに固定されている。複数の媒体を駆使するアーティスト毛利悠子(1980年生)は2009年から、乗降客の頭に降り注ぐ水漏れを食い止めようと駅員たちが自作する、しばしば創意に富んだ仮設の構造体を写真に撮りつづけている。
床に砂嚢を置いてまわりを警告標識や三角コーンで囲んだだけのものから、天井に込み入った仕掛けを据え付けたものまで、こうした構造体は多岐にわたる。毛利によれば、写真プロジェクト《モレモレ東京》は次のようにして始まった。「今から10年ほど前、お金はありませんでしたが時間はたっぷりあったので、JRや地下鉄の一日乗車券を買っては、東京中の行ったことない場所へ出かけ、ぶらぶら散歩しながら駅構内の水漏れ現場を観察したりしていました。駅や路線によって水を食い止める方法や使われているオブジェが異なる様子は、彫刻への様々なアプローチのようにも見え、私にとってインスピレーションの宝庫だったのです」。※
(…)「モレモレ」(何かが漏出するさまをいきいきと描写する言葉である)をタイトルとし、小さな一時的建築を捉えた毛利の写真は、現代都市が突きつけてくる課題に立ち向かう人間の創意工夫を物語っているだけでなく、リスクに直面しながらもそれに負けないユーモアの感覚を伝達してもいる。東京ならではの、日常の中にひそむユニークな「美」、喜び、機知の感覚を提示しているのだ。
※毛利悠子、レーナ・フリッチュ宛てEメール、2019年9月16日
-『Moré Moré Tokyo (Leaky Tokyo) 』あとがきより抜粋(訳:近藤学)
アーティスト
毛利悠子
Yuko MOHRI
1980年生まれ。美術家。
コンポジション(構築)へのアプローチではなく、環境などの諸条件によって変化してゆく「事象」にフォーカスするインスタレーションやスカルプチャーを制作。
近年の個展に「I/O」(アトリエ・ノールト、オスロ、2021年)、「Parade(a Drip, a Drop, the End of the Tale)」(ジャパンハウス サンパウロ、2021年)、「SP. by yuko mohri」(Ginza Sony Park、東京、2020年)、「Voluta」(カムデン・アーツ・センター、ロンドン、2018年)、「毛利悠子:ただし抵抗はあるものとする」(十和田市現代美術館、青森、2018年)など。また「第23回シドニー・ビエンナーレ」(シドニー、2022年)、「アジア・アート・ビエンナーレ2021」(台中、2021年)、「第34回サンパウロ・ビエンナーレ」(サンパウロ、2021年)、「グラスゴー・インターナショナル2021」(グラスゴー)、「第9回アジア・パシフィック・トライエニアル」(ブリスベン、2018年)、「第14回リヨン・ビエンナーレ」(リヨン、2017年)など国内外の展覧会に参加。
2015年 アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)のグランティとして渡米
2015年 日産アートアワード グランプリ
2016年 神奈川文化賞未来賞
2017年 第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞
2018年 文化庁文化交流使東アジア文化交流使として中国に滞在。
2019年 アンスティチュ・フランセ シテ・アンテルナショナル・デ・ザール2020 ローリエット(フランス)
(撮影:新津保建秀)
出版物

ただし抵抗はあるものとする
現代美術の旗手、作家本人へのロング・インタビューを含む初の作品集。
十和田市現代美術館展覧会(2018年10月27日‒ 2019年3月24日)公式図録