稀少、サイン入り

走馬灯のように-釜ヶ崎 2000・2014

須田一政

サイン・ナンバー入/限定300部

2014年、釜ヶ崎を撮ってほしいという依頼を受けてその地を訪れた。つい引き受けてしまった体で大阪の知人に相談し、カメラは極力目立たないコンパクトなものをというアドバイスをもらった。にもかかわらず、持参したのは中判カメラ2台。否が応でも目立つ。考えるまでもなく、私は社会性がある人間とは言えない。社会に対して使命感も持ったことがない、「傍観者」と評されたこともある写真家である。単なる初老の不審人物だ。当たり前に、撮影中は絶えず住人たちの鋭い視線と、警告めいた大声を浴びることになった。

 今回の撮影をきっかけに、ネガのまま眠っていた2000年の「釜ヶ崎」を引っ張り出して、14年を経て初めて対面することになった。依頼をもらわなければ本人の眼にも触れなかったろうこの作品を、同時に発表することになったのは思いがけない喜びである。比べてみれば釜ヶ崎は徐々に変わりつつあった。しかし、何より変化しているのは私自身の視線の行先なのだと気が付いた。街はこちらの意識の在り様で姿を変えるのだ。

ー写真集『走馬灯のように:釜ヶ崎2000・2014』より抜粋

判型
212 x 150 x 25 mm
頁数
60頁(2000); 56頁(2014)
製本
上製本、ジャバラ(2000);スイス装+1頁袋とじ(2014)
発行年
2015
出版社
Zen Foto Gallery
エディション
300

須田一政

Issei SUDA

1940年東京都生まれ。62年に東京綜合写真専門学校を卒業。67年より寺山修司が主宰する演劇実験室「天井桟敷」の専属カメラマンとなる。71年よりフリーランスの写真家として活動を開始。76年、『風姿花伝』にて日本写真協会新人賞を受賞し、一躍注目を浴びる。
その後、83年に写真展「物草拾遺」等により日本写真協会年度賞を受賞。85年に写真展「日常の断片」等により第1回東川賞国内作家賞を、97年に写真集『人間の記憶』により第16回土門拳賞など受賞多数。2013年には東京都写真美術館にて大規模な回顧展「凪の片」が開催された。
現実と非現実の間に漂う一瞬を捉えたその作品は近年とみに海外での評価も高い。
主な作品集に『風姿花伝』(78)、『わが東京100』(79)、『紅い花』(00)、『風姿花伝(完全版)』(12)、『私家版・無名の男女』(13)、『Early Works』(14)、『Childhood Days』(15)、『Rei』(15)など。

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